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大前研一氏の反論(日経新聞より) [フクシマ]

結構長いが、こういう意見もあるのだと忘れないようにしたい。

日経新聞 2012年07月23日(http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120723/316908/?top_jihyo
---------------------以下引用---------------------
「国会事故調の報告書は「原発の安全」に何の役にも立たない」

 東京電力福島第一原発事故について国会事故調査委員会(国会事故調)が最終報告書を出したが、これがひどいシロモノである。原子炉分析などの事実に基づかず、政府や東電をはじめとする関係者への聞き取り調査を中心に三面記事的に仕上げた内容だ。いわば風聞や偏見で書き上げた報告書とも言えるもので、原発の安全性確保にとっては邪魔なだけである。

■「人災」のとらえ方がまったく違う
 福島第一原発事故を検証する国会事故調は7月5日、最終報告書を決定し、衆参両院議長に提出した。報告書は、東電や規制当局が津波対策を先送りしたことについて「事故の根源的原因」と指摘し、自然災害ではなく「人災」と断定した。

 この報告書の内容については、下に示す「国会の原発事故調による調査結果概要」を見ていただきたい。

Image7.jpg私が去年10月に出した報告書でも、福島第一原発事故は「人災」と言っているが、国会事故調が考える「人災」とはまったく違う。

 私が「人災」と指摘したのは、原子力安全委員会が外部電源の長期的喪失を前提にしなくて良いとしていた点である。原子力安全委員会の想定が間違っていたことが、福島第一原発事故の根本的な原因だ。

■原子炉の技術的な分析をしていない
 一方、国会事故調査の報告書では、そもそも原子炉の分析がなされていない。「現状では内部に入れないから」という理由で原子炉についての技術的な分析をせずに、関係者がどのように事故前後に行動してきたかという点を分析している。

 そして、「何度も事前に対策を立てるチャンス」があったのに、「国民の安全よりも組織の利益を最優先」して、東電が対策を怠ってきたことが、事故につながったと結論づけている。

 しかし、国会事故調が指摘する事前の対策(原子力安全委員会の想定)をすべて施していたとしても、福島第一原発は津波による事故を防ぐことはできなかったというのが事実だ。なぜなら、地震によって6系統ある外部電源がすべて失われているところに津波が襲い非常用電源の喪失が起きたことが事故の原因だったからだ。

 また、国会事故調の報告書では、福島第一原発1号機に関しては津波の前に地震で破損があった可能性についても言及している。ところが、その根拠となっているのは、関係者への聞き取り調査でしかない。

 原子炉の技術的な分析をすることなく、聞き取り調査ばかりしていたのでは、しょせんは風聞を集めた三面記事のようなレベルで終わってしまう。

■究極の事故原因は外部電源がすべて崩壊したことだ
 報告書は、現場にいた作業員が地震発生後、津波が来るまでの間に「ゴーッという音」を聞いたと言っている、などを根拠に、1号機が地震によって破損してなかったとは言い切れないと指摘している。

 しかし、地震発生から津波到達までの45分間は(非常用)電源が生きていたのでメーターの記録がある。それを見ると配管破断を示すような圧力ロスなどは観察されていない。

 すでに本連載で紹介した私のH2O報告や今週発売される『原発再稼働「最後の条件」:「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書』(小学館)でも述べているように、1号機は地震で配管破断などの損傷を負っていなかったというのが実情だ。

 結局、最低限調べればわかるような事実すら検証せずにまとめているのが、国会事故調の報告書なのである。事故には物理的な原因があり、人や組織はそれを防げなかった追加的な原因である。解決あるいは再発防止のためには、まず物理的な事故原因を特定しないといけない。

 福島第一原発事故を防げなかったのは外部電源がすべて崩壊したからである。原子炉の場合、外部電源がすべて失われると非常用電源が起動するが、1~4号機に関しては非常用電源も津波ですべて失われた。しかし外部電源が一系統でも生き残っていれば(空冷の非常用ディーゼル発電機が1機だけ生きていた)5~6号機のように冷温停止まで持ち込めた可能性が大きい。

 つまり究極の事故原因は外部電源がすべて崩壊したことであり、それに対する対策を打ってこなかったのは原子力安全委員会の「外部電源の長期喪失は考えなくてもいい」という指針があったからである。

 日本の場合、「送電線が弱い」という前提を置かなくてはいけない。私はこれに関しては柏崎刈羽の事故の時にも本連載で指摘している。

■海外事情を知らずに日本人異質論を加える愚
 国会事故調の報告書がここまでひどい内容になったのは、もともと各政党の推薦する委員の考え方やバックグラウンドに問題があったからだが、黒川清委員長のキャラクターも強く影響していると思われる。

 黒川氏自身の執筆によると思われる報告書の英語版序文には、「この原発事故はメード・イン・ジャパンだった」ということが書かれている。日本人は昔から権威に弱くそれに従うことに慣れているので、こういう事故が起きた。だから、すべての日本人が反省しなくてはいけない、とまで書いている。

 これに限らず、日本語版にはない文章が英語版にはたくさん書かれている。そこに「黒川節」が出ていて、客観的であるべき報告書に、日本人異質論のような論調が加味されてしまっている(英語版序文のうち、「この原発事故はメード・イン・ジャパンだった」など一部の表現については日本語版序文にも今後反映される予定)。

 この黒川氏という人物は、海外での勤務歴はそれなりにあるようだが、その割には海外のことを知らない。国会事故調の報告書では、「規制当局と東電の関係が『逆転関係』になり、原子力安全の監視・監督機能の崩壊が起きていた」とも書かれているが、こんなものは日本人特有の現象でも何でもない。

■規制当局との「逆転関係」はむしろ欧米の専売特許だ
 規制当局と業界の関係が逆転し、監視・監督機能をねじ曲げてしまうのは、むしろアメリカでよく見られる現象である。たとえば銃業界がそうだ。全米ライフル協会などの圧力団体が規制当局をも凌駕し、アメリカ社会全体をゆがめてしまっている。

 このような規制当局を業界が丸め込んでしまうのは石油業界や自動車業界でも長年問題となっているし、いま問題となっているオスプレイなどもやはり産軍複合体の都合で安全審査した結果だろう。

 金融業界でも「逆転関係」は起きている。金融機関と規制当局の力関係がおかしくなった結果、リーマンショックに至ったのは記憶に新しいところである。さらに最近でも、イギリスでLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作問題が起きたが、これも金融機関と規制当局の関係が逆転したことが原因だった。

 結局、「逆転関係」なるものは、日本よりもむしろ欧米の専売特許なのだ。そうした世界の事情も知らずに、日本の原子力政策における「逆転関係」を特別視して、「この原発事故はメード・イン・ジャパンだった」などという結論を導き出す。さらに、「日本中の人々が深く反省しなければならない」とまで書く。

■「原子炉をより安全なものにしたい」という願いが読みとれない
 黒川氏は、日本人に対する個人的偏見で報告書をまとめただけでなく、幼稚な報告書を公表することで世界に対して恥をさらしたのである。

 現に海外の論調は「この事故を日本独特の文化が原因」とすることは不毛な議論であり、対策も再発防止にも役に立たない、と批判的である。なぜなら世界中を震撼させた福島第一の事故からの教訓を生かし、「原子炉をより安全なものにしたい」という願いは、すくなくともこの報告書からは読みとれないからだ。

 多くの国は福島第一の後、原発に対して批判的な世論が増えている。それを防ぐためにも日本がしっかり分析し、役に立つ再発防止策を提示してくれないと困る。

 上述の拙著では事故の物理的な分析から再発防止のための物理的な提案をしている。つまり世界中の原子炉の設計者とオペレーターが考えても見なかった現象が、実は簡単に起り、極めて深刻な事態に至るのだ、ということを指摘している。

 つまり反省すべきは日本人ではなく、そもそも商業用原子炉を開発した米GE(ゼネラル・エレクトリック)社や米ウェスティングハウス・エレクトリック社であり、その根底となっていた安全思想や安全設計に重大な落ち度があった、ということである。

 組織や人の問題は設計段階の重大な欠陥を乗り越える力がなかった、という点で確かに問題ではあるが、それは本質ではない。そのことを突きつめていけば、東電の問題というよりは設計者の問題であり、その設計段階における重大な瑕疵を見抜けなかった世界中の規制当局の問題でもある。

■国会事故調の報告書を受け、どうするつもりだろうか
 そもそも国会事故調なるものが、何を目的として設置されたのかも不明だ。そんな委員会から出した報告書を国会が受けて、これをどうしようというのだろうか? 

 おらく国会は事故調の報告に基づいて(過剰反応して)間違った組織と人選に“生かして”いくのだろう。それが原子炉の安全に寄与するとは思えない。

 国会事故調査がやったことは時間の無駄であり、原発の安全を希求する側からすれば、「余計なお世話」でしかなかったのである。
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tak

大前研一氏と黒川清氏、仲悪いんでしょうかね。
(^^;

工学部出身の大前氏にとっては
医学部出身の黒川氏が素人に
見えるのかもしれませんが、
逆に、そういう視点からものを見る
ことも必要だと思われたからこそ、
黒川氏が委員長に選ばれたわけです。
人として、その点は尊重すべきですよね。

ただ、規制当局を業界が丸め込んで
しまうのは日本人特有の現象でも何でもない、
という大前研一氏の主張は、たしかに
そのとおりでして、私も、アメリカ人
の得意ワザだと思います。

まあ、日本人として、海外に対して
エクスキューズが必要というのはわかるのですが、
あまりにも過度に卑屈になるのは、売国行為ですよね。

by tak (2012-07-27 11:22) 

micyu

takさん
こんにちは。そう、大前氏は黒川さんが気に入らないのかもしれませんね。
私は、この日経の記事をコピーしているときに、あらかた大前氏の主張は目を通したのですが、繰り返し読もうとはなかなか思えませんでした。

僕にとっては、大前氏は多弁な失語症(矛盾しているようですが)の少年のように思えてなりません。・
こんな日本映画の場面が頭に浮かびます。

子どもが学校から帰ってくる、ふせっていた母親は未明に亡くなっていた。

父:先ほどお母さんが亡くなったよ。
子:・・・僕学校で先生に褒められた。お母さんが大変なのに、頑張っているって
父:だから、さっきお母さんは亡くなったんだよ
子:・・・ちゃんと授業で意見もいえたよ。僕の言っていることは正しいって。
父:そうか、それは良かったな。でも明日から母さんはいないんだよ。
子:母さんが亡くなったのは悲しいよ。でも僕頑張る。あすは体育の授業なんだ。母さん、体操着洗濯してくれたかな・・・

能弁だけれど、本当に向き合わなければならないことには、ちゃんと向き合えない、そんな精神疾患を子供のころに患った方のようにお見受けします。フクシマのことは、日常生活の延長線で乗り越えていけるようなことではない、と黒川さんは言いたいのであって、そのことが分かっていても、見ないことにしたい大前氏がいる、という風に私は受け取りました。



by micyu (2012-07-28 10:09) 

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